「次で俺も最後だからさ」


「うん」


「絶対優勝して、ドラフトかかりたいんだ」



累くんの表情は希望に満ち溢れていた。



「もしもドラフトかかったら遠くなるね」


「何いってんだよ。俺は俺だから」



あたしの頭をぽんっと叩く。


たしかに累くんは累くんだけど。
でも、やっぱり野球選手になると遠くなるよ。



「俺、いまだに麟太郎(リンタロウ)さんと遊ぶし」


「そうなんだ」


「だから変わんないよ」



麟太郎さんってのは累くんの二つ上の先輩で。
一昨年の10月ドラフトで選ばれて去年のシーズンからプロ野球選手になったんだ。



「…そっか」



〝変わらない〟
累くんがそう言うとほんとにそんな気がしてきてしまうから不思議。



「今年からは颯人(ハヤト)さんもプロだもんなぁ」


「うん。すごいよね」


「今年のドラフトは俺らなんだって思うと気合い入るわ」



そう話す累くんはどこまでも輝いていた。