「嫉妬しちゃうな」



累くんの手があたしの手に触れる。



「累、くん」



緊張が増してうまく話せなくなる。



「俺、瑛梨奈ちゃんといると落ち着くよ」


「え?」


「理由はまだ言わないけどね」



その顔はもううぬぼれてもいいんじゃないかと思えた。
だって頬を少し高潮させてる累くんなんて今まで1度もみたことがなかった。



「いつ、理由聞かせてくれるんですか?」


「春の大会優勝したらかな」


「優勝、してくださいね」



累くんからのその言葉を早く聞きたかった。

優勝したら……──



あたしは累くんとの未来を歩んでいけるのだろうか。
ふと脳裏に浮かんだワカの笑顔をすぐにかき消した。
あたしはいま、あたしの目の前にいる人を見ていきたい。



「優勝したら、あたしと復縁しましょうね」



いつの間にか商品を持って横に立っていた涼香さん。



「それ置いて早く行ってよ」


ため息を付きながら冷たくあしらう累くん。


このふたりは以前はすごく思い合っていたはずなのに。
それを壊したのは自分なのだろうか。


ただ、誰かが幸せになると誰かが不幸になる。
全員が幸せになる方法なんてないのだ。