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去っていく背中に手が伸びそうになる。



「ダメだ…」



でも、手を出すことはできない。



「瑛梨奈と別れたよ」



俺はスマホを耳に当てて離す。



『ありがとう。ワカ』


「でも、これで塁さんと瑛梨奈がくっつくかどうかは分かりませんよ」


『時間の問題でしょ』


「そうっすね」



あの日、涼香さんに〝瑛梨奈と別れる〟ことをお願いされた。
でもそんなのは嫌だった。
離したくないと思った。


でも、瑛梨奈が俺のために塁さんが別れたことを黙ってことを知って。
俺も瑛梨奈のためになにかをしたいって思った。


だから


『クリスマスまでは待ってください』


そう告げた。
どうしてもクリスマスを一緒に過ごしたかった。
俺のワガママ。
瑛梨奈に告げた愛の言葉も演技ではない。
すべて俺の心から出た言葉だ。


でも、こうでもしないと瑛梨奈が塁さんに向かえないから。
俺といることを選んでしまうから。
こうするほかなかった。