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再び八重を背中に乗せて、八重の自宅へと戻った。家の中は静まり返っていて物音ひとつしない。
だけど確かに感じる〝視線〟
「エ、エニシさま。でも幽霊との縁切りはできないんじゃ……」
和室の居間に着いて、八重が不安そうにしていた。俺はキョロキョロと周りを見渡して物陰に潜む視線の主と目が合った。
互いに軽く頷くと、俺はすぐに八重を見た。
「でも八重を困らせている正体の名前が分かれば縁切りは可能だ。分かった上で決意が変わらねーなら望みどおり切ってやる」
「正体って……。エニシさまご存知なんですか?」
その言葉に俺はクスリと笑う。
「俺よりも八重のほうが知ってる人だろ?」
そう言って、ずっと視線だけを送り続けていたヤツを呼んだ。ゆっくりと一歩ずつ、少しだけ申し訳なさそうに俺たちの前に顔を出した。
「……え?ど、どういうことですか?」
驚きのあまり八重は瞳を丸くしている。八重が幽霊だと疑っていた正体は……。
「そう。この三毛猫だよ」
と、言ってもただの猫ではない。
――『おいで』
あの時、猫の鼻先が俺の指に触れた瞬間から、
俺は全ての理由を知っていた。
溢れ出す感情を俺に知らせるように、その想いが脳内へと伝わってきたからだ。



