心ときみの物語



高嶺神社は縁結びの神様。

連日、縁を結びに来る一方で、巷では密かにこんな噂が流れている。

高嶺神社で裏絵馬をもらって、そこに自分の名前と相手の名前を書いて、離れた場所にある古びた絵馬所にそれを掛けると……エニシさまが相手との縁を切ってくれるんだって。


そう、俺は表向きの縁結びの逆。縁切りの神様。

まあ、正直神様でもなんでもないけど、その力だけは確かにある。一応あの神社の跡取り息子だし、こんな俺でも人様の役に立てって意味で備わったものだって勝手に解釈している。


「あのさ、縁を切るってどういうことか理解してる?」

離れたいとか距離をおきたいとか、そんな可愛いものじゃない。

人と人との縁を切るということは、あの窓の外を歩いている通行人と一緒。

どんなに深い関係だったとしても、どんなに密な思い出があったとしても他人になる。


つまり、すべてを無かったことにして無関係になるのだ。

そして切れた縁は二度と永遠に結び直すことはできない。


「分かってます。全部覚悟をした上で絵馬を書きました。中途半端な気持ちじゃないです」

まるで俺を吸い込むような強い瞳。

それを見てガキのくせに、なんて拒絶することはできなかった。


「分かった。お前の願い叶えてやる」