心ときみの物語



いつの間にか縁側にはオレンジ色の夕日が射しこんで、空ではつがいの赤トンボが仲良く飛んでいた。

「とりあえず今日は帰るよ」

俺たちは靴を履いて玄関へ。


幽霊との縁切りなんてどうにかしてあげたくても、どうにもできない。それに……。

「あ、エニシさま。小鞠さん待って!」と帰り際に八重がなにかを持ってきた。それは小さな紙袋。中には透明なタッパーがひとつ。

「春菊と人参の白和えなんだけど嫌いじゃないかしら?いつも作りすぎちゃうの。良かったらどうぞ」

八重は足を引きずりながら結局外まで見送りにきて、俺たちの姿が見えなくなるまで手を振っていた。

その帰り道。

心臓破りの坂道を下りながら、小鞠が俺に聞いてきた。

「今回の依頼はどうするんですか?」

過去に色んな依頼があったけど、目に見えないものとの縁切りを頼まれたのはこれが初めて。俺だってどうしようか迷っている最中だ。

「八重さん、とても良い人だったので望みは叶えてあげたいですけどね……」

「ふっ」

「え?なぜ今笑ったんですか?」

「お前の嗅覚も大したことないと思ってよ」

「なっ……!」

小鞠のふて腐れている顔を見ながら、俺は少しはや歩きで家路へと歩いた。