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その日の夜。「あははは」とお笑い番組を寝転がりながら見ていた俺の後ろから突き刺すような視線。
一時間は我慢したけど、さすがにしつこい。
「んだよ?目にチャック縫い付けてやろうか」
「……はあ」
小鞠は緋色の袴を膝の上に乗せて、解(ほつ)れた裾を裁縫セットでチクチクと縫いながら再びため息。
「どうするんです?依頼者の方の縁を切ってあげるんですか?」
「それを望んでるんだからそうだろ」
「………」
小鞠の性格は分かりやすい。すぐに顔に出るし不満があると口を尖らせる。
普段は俺の仕事に関しては口を出さない。というか自分が踏み入れるべきではないとそこはしっかりと一線を引いている。
だけどたまに我慢できなくなると、こうして視線だけで訴えようとしてくるから本当に面倒くせえ。
「清香の気持ちに同情してんだろ?」
縁切りは片方が望めば相手の気持ちは関係なく切ることができてしまう。
相手のため、なんていうのは結局建前で。縁切りの本心はみんな自分がラクになりたいから。
縁を切ると同時に悩みや苦しみから解放されたいんだ。



