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夜はあっという間にやってきた。
空には黄色い満月が浮かんでいて、ウサギが優雅に餅つきをしてやがる。
気楽だね、本当。生まれ変わったらあのウサギになりたいぐらい。
「お気楽ですよね。エニシさまって」
「あ?」
バリバリと寝転がってせんべいを食べる俺を見て、小鞠が呆れた顔をしていた。
広くも狭くもない畳張りの拝殿(はいでん)の中。
昔はこの場所が参拝所だったのに、表に立派な本殿ができてからはここはただの古びた小屋と化している。
「もしかしてその洋服で依頼者の方に会いにいったんですか?」
「バカ。俺の一張羅だぞ」
「………」
「明らかに引いてんじゃねーよ」
まったくどいつもこいつも。人間、洋服なんてただの飾りなんだよ。いい服で着飾ったって中身スカスカじゃ意味ねーじゃん。
そんなやり取りを小鞠としてる中、ザッと砂利道を踏みしめる音。
真っ赤な鳥居を抜けて社務所を通りすぎて、手水舎(ちょうずしゃ)の右の細道に入る。
そこの石段を12段上れば……ほら、きた。



