心ときみの物語


俺が神主を継ぐのは親父が体を壊した時か死んだ時だと、俺ではなく親父はよく言っている。

できるならお前に任せたくはない、ともぼやいているっけ。

本当にそのとおりだよ。家を継ぐなんて俺には向いてないし荷が重い。

大学だってそれに関係する学科じゃないし、卒業したら普通に就職して、裕福でもなければ貧乏でもないくらいの給料をもらって、ひとり暮らしでもするかって、甘い考えしか頭に浮かばない。

「まあ、お前はお前のやりたいことをしろ。当分は倒れたりしないから大丈夫だよ」なんて、親父が笑って言うと、どうしようもなく自分が情けなくなる時があるけど。


「あ、縁さんこんにちは」

境内では数人の巫女が働いていて、もちろん俺とも顔見知り。その採用基準は知らないけど、アルバイトの若い子もいてたまに声をかけられる。

一応挨拶ぐらいはするけど、名前も巫女がどんな仕事をしてるかなんて知らない。

思えば俺って知らないことだらけだ。

むしろ、知ろうとしたことなんてあったっけ。
本当俺ってなにも考えずに生きてるなあって思うよ。