雪乃に呆れられた顔をされたあと、校舎裏にある非常階段を登って屋上へと行った。
「うわ、すげー眺め。今の学生ってこんな景色見ながら昼飯とか食えちゃうわけ?」
屋上からはオフィスビルが夕日に当たってオレンジ色に染まっていて、その隙間から富士山もわずかに顔を出していた。
「いえ、いつもは施錠されてます。でも非常階段の柵の鍵は壊れてるから知っている人は内緒で来てるって感じで」
「ふーん。雪乃も?」
「わ、私はたまにしか……」
「悪い子じゃん」
ただからかっただけなのに雪乃は下を向いてしまった。
「全部、佳苗が教えてくれたんです。私、佳苗がいないとなにもできなくて……」
雪乃は唇を噛み締めながらギュッと制服のスカートを掴んだ。
「きっとこのままだと全部がダメな方向に行っちゃう。だから早く佳苗との縁を……っ」
気持ちだけが早くなる雪乃の口を人差し指で制止して、トントンッと銀色の手すりを叩いた。
「まずは話を聞いてから。神様に全部話してみなさい」
こんな時だけ都合よく神様を使った。
人は自分と掛け離れている遠いものになら心を開きやすい。とくに神様っていうなんでも許してくれそうな存在には余計に。



