駅に着いて、彼女は改札口の向こう側の柱のかげに立っていた。
僕を見つけるととびきりの笑顔で出迎えてくれた。

そんな彼女に対して笑い返したけれど、きっとぎこちなくなっているだろう。


「ただいま」
「おかえり」

そして、僕たちはいつもと変わらずに挨拶を交わした。


「ねぇ、今日さ、火の山公園行かない?」
「あーいいよ」


火の山公園は下関の街や海を渡った北九州市門司区の一部を一望できる場所にあるから、地元の人間はもちろん多くの観光客が訪れている。

僕たちも何度となく訪れた場所。

そして、初めてのデートで夜景を見ながら僕が告白した場所でもある、いわゆる想い出深い場所だ。