3月。

空はペンキをぶちまけたみたいに青々としていて、ホウキ雲が南風にさらわれていた。

憎たらしいほど澄んだ空気。

卒業式も終わって俺はもう高校生ではない。


〝卒業おめでとう〟と書かれた花の飾りを胸に付けて屋上でひとり、仰向けで空を眺めながら走馬灯のように三年間を振り返っていた。


色々あった。

色々ありすぎた。

だけどやっぱり一番に浮かぶのはアイツのこと。


距離なんて、あの雲のほうが近いほど俺たちは遠かった。

だけど、アイツは息を切らせて階段を登ってきて、清々しいけれど友達との別れに少しだけ目を腫らして。

アイツはきっと……。


「……ハア……やっぱりここにいた」

ほら、きた。