ピンポーン



「あら、誰かしら。」



はるくんが玄関へ向かう。



…賑やかな声が聞こえる。だれだろう?
玄関の方をチラッと覗くと



「あ、女連れこんでるし。まじかよ」



「ちょ…!さっちゃん…!!だめ…!」




「…え?」




はるくんと、はるくん。


はるくんが2人?




「あれ、さっちゃん?久しぶりじゃん!」



「…はる、くん…?あれ…?」



「っ…とりあえず今日は帰って頂戴!!!」


「は?何言ってんだよ、りゅう。お前兄ちゃんが来てやったってのに、さっちゃんと一緒に何して
って、おい!!閉めるな!」





バタン!



勢いよく閉まるドア。




流れる沈黙。





「さっちゃ…ごめ、なさ…」



涙目のはるくん。いや、りゅうくんが弱々しく口を開いた。




そういえば、はるくんには弟がいた。
はるくんと顔がソックリで、可愛い雰囲気の弟のりゅうくん。





そっか。オネェなのは、りゅうくんだったんだ。





「いいよ、りゅうくん。顔上げて」



「さっちゃん…?」



「どうして、はるくんに成り代わったの?」



「さっちゃんは、ずっと、お兄ちゃんが好きだったから、時間が経った今、僕がはるだって言ったら好きになってくれるかと思って…」




子どものように泣きじゃくるりゅうくん。



「りゅうくん、顔を上げて。」


目が真っ赤になったりゅうくんと目が合う。



パシンッ



「…最低だね、りゅうくん。」




そう言って家を出る。


彼は嘘をついた。
私が好きだった兄に成りすました。


でも、私も彼に嘘をついた。
好きでもないのに付き合った。


私も最低だ。





…もう、彼とは会わない方がいい。