気まぐれな君は



証。私と真白くんが一緒にいた、証だろうか。それとも、私と真白くんが付き合っていただけの証、だろうか。


それとも、私と真白くんが確かに生きていた、証、だろうか。


若葉たちは知らない、現実。それが私を一番臆病にさせている。別に病気だから嫌なわけじゃない、それをひっくるめて真白くんが好きだ、でも。


自分自身が、不安。ちゃんと最期まで、私は笑顔でいられるだろうか。君の傍で、一緒に笑っていられるだろうか。


一緒にいるなら、泣き顔じゃなくて笑顔を見ていてほしいと思う。泣いていらぬ負担を掛けたくない、そう、真白くんの負担にはなりたくないのだ。でも、自分が負担にならない保証なんてどこにもないと思ってしまって。だから、私は多分、ぐるぐると悩み続けている。


初めての恋は、分からないことだらけで。確かに、余計なことを考えすぎなのかもしれないともいながら、私は椅子に深く沈みこんだ。


「どうしたのー雫」

「んー……なんか、ただ好きなだけじゃダメなのってめんどうだなって」

「それを言ったら地球上から人類が滅びるよ」


今は恋愛結婚がメインなんだから、と若干どころか結構的外れなことを言った茉莉に、ぱっと赤くなっていそうな顔を隠すために俯いた。


結婚、って。それってだって、そういうこと。


一応、知識だけはある。中学の時に何故か若葉に仕込まれて、一通りのことは。詳しいことは知らない。だけど、そうか、そういうことも、あるのか。


本当に。分からないことだらけで、煩わしいことも多そうだ、……でも。


私が真白くんを好きな気持ちは、きっと変わらない。


それだけで済めばいいのに、ここまで話してしまったからには三人にネタにされるんだろうなあと思うとげんなりしてしまいそうになるのを堪えて、椅子から立ち上がる。急に立ち上がった私にびっくりした三人と視線を合わせると、私は帰る、と宣言をした。


「えーもう帰るの?」

「一緒に帰ろうよどっかよろ」

「私も帰ろうかなあ。部活行くのこの時間だとちょっとめんどくさいし」


三者三様の反応を見ながら、予想通りの言葉に笑って教室の入り口で待機した。のろのろと支度をする三人の傍ら、スマホに連絡がないのを確認する。