「どうしよう。あれはやべーわ」



俺は親友の泰志(たいし)の横でしゃがみこむ。



「あ?何が?」



泰志はあくびをしながら俺を面倒そうに見る。



「あれ、かわいすぎ」


「ん?」



俺の指すほうをチラっと見て〝あー〟と呟く。



「まぁ、お前好みじゃん?」


「新しく入ったのかな?」


「じゃね?今日から4月だしな」


「あーそうだった。ってか早くいかなきゃ!」



俺は急いでエレベーターに駆け込む。


こんなこといままで一度もなかった。
いつも余裕を持って出勤して。
部下のみんなを迎える。

それが部長である自分の役目だと思ってた。



「そろそろいんじゃね?恋、しても」


「んー」


「珍しいじゃん。お前が仕事以外に夢中になるの」



泰志がおかしそうに笑う。