「これだけは受け取って」



下についてすぐに星那がポケットから箱を出す。



その箱はどうみても指輪が入ってるような箱で。



「これ…」


「ほんとはもっとかっこよく渡すはずだったんだけどさ。でもどうしても今日渡したかったから」



あたしの手にその箱を乗せて頭を撫でる。



「今日はもう帰るな」



切なそうな顔でそう言ったかと思うとすぐにあたしに背を向けた。



星那の背中を見ながら思い馳せる。
この指輪を星那はどんか思いで買いにいったのだろうか。
どんなふうに始まったあの場所で言おうと計画してたんだろうか。
このあとはどうしようとしてたのだろうか。


一年記念なんて迎えたことのない星那が
一生懸命考えたプランなのに。

あたしは元カノに嫉妬をして
星那が考えたプランを全部ないものにしようとしてるのではないか。


突然心の中に暖かい風が吹く。
星那を思う暖かい風が。