「これだけは受け取って」



俺はポケットから箱を取り出す。



「これ…」


「ほんとはもっとかっこよく渡すはずだったんだけどさ。でもどうしても今日渡したかったから」



愛來の手にその箱を載せて、あたまを撫でる。



「今日はもう帰るな」



俺はそれだけ言って愛來に背を向ける。


本当は帰りたくなんてないけど。
でも、愛來が一緒にいたくないのに、ずっといたら。俺が愛來から離れたくなくなるから。



あー。
計画全部ぶち壊し。

俺が悪いんだけど。


予約してフレンチもキャンセルしなきゃな。


俺はポケットからスマホを取り出す。


フレンチレストランに電話をかけようとしたとき



━━ドンッ



思いっきり背中になにかがあたる。



「いてっ」



振り向くとそこには息を切らした愛來。



「愛來?」


「星那!ごめん!ヤキモチやいた!」



愛來が俺にぎゅっとしがみつく。