「今日はコーヒー豆を買いに来たんです」

飛鳥は早々に要件を述べると、櫂人はとても嬉しそうに「そっか、そっか」と頷く。

「それからこれも……」

続いて、財布からコーヒーの割引券を差し出した。

「せっかくだから、一杯頂いて帰ろうと思って」

「ありがとう、飛鳥ちゃん。準備するから待ってて」

櫂人は割引券を受け取って、早速コーヒーを入れる準備に取り掛かる。

時折、お客様と会話をしながら手際よく仕事をこなしていく姿が人としてとても立派に見えた。

ちょっと強引なところもあるけれど、気立てが良くて仕事を愛しているのが分かる。

「はい、お待たせ」

少しすると、白いカップに注がれた香高いブレンドコーヒーが運ばれてきた。

「さっきから俺の事見てたでしょ?」

「ち、違いますよ……!ちゃんと仕事してるんだなぁって思っただけで……」

飛鳥は動揺してミルクを注ぐ手元が狂いそうになったのをグッと堪える。