……申し訳ない?
何故?

「べ、別に武田さんが責任を感じることじゃないと思います! 伊藤さんだって、武田さんが仕事人間だってこと分かってたと思うし、むしろ頑張ってる姿を間近で見てるんだったら、支えて、応援するのが普通なんじゃないですか!」

一気に言い切ったあと、急に恥ずかしくなったので「まぁ、恋愛経験少ないんで、よく分からないですけど」と付け加えておいた。

どうしてこんなに声を荒げてしまったんだ私は。

すると、武田さんは驚いたようにこちらを見て、フッと表情を緩ませた。

「まさか、お前からそんなもっともらしい意見が聞けるとはな」

「ちょっ、バカにしてます?」

「いや」

武田さんは、見たこともないような、ふんわり優しい顔をしていた。

こんな顔できるんだ。
仕事中の武田さんは、表情のバリエーションが5パターンくらいしかないので、ちょっとびっくりだ。

「武田さんとこういう話してるなんて変な感じです」

「あぁ、俺が一番驚いている」

「ですよね」

「高畑はいるのか? そういう相手は」

「いません。面倒じゃないですか。連絡とったり、デートしたりするの」

「高畑らしいな」

「まぁだいたい音信不通になって自然消滅か、私のだらしなさに呆れて振られるか、って感じで彼氏とは長続きしたことないです」

「そうか。相当懐が深い相手でないとお前の恋人は務まらないだろうな」

「ははは。一生独身でいる覚悟はもう出来てます」

ここまで踏み込んだ話が出来るとは思わなかったので、正直ちょっと嬉しい。
気がつけば、今日一日モヤモヤしていた気持ちは、すっかり無くなっていた。