☆☆☆

准一の家はとても大きな家だった。


昔ながらの長屋で、敷地内には離れまである。


今日は通夜だから人はまだ少なく、親戚ばかりが集まってきている。


それでもあたしたちは准一を一目みたくてここまで来ていた。


准一の両親もきっとそう考えて真夜中に連絡してきたんだろう。


だけどあたしは准一の顔を見る事に少しだけ抵抗を感じていた。


もし、あの写真みたいに苦痛にゆがんでいたら?


そう思うと、足がすくんで動かなくなる。


あんなに苦しい顔をして死ぬなんて、とても報われないことだ。


「梢」


庭先で立ち尽くしてしまったあたしに、渉が手を差し出してくれた。


「あ、ありがとう」


あたしはそう言い、おずおずとその手を握る。


嬉しいはずなのに、あたしの心は少しも動くことはなかった。