「なに、これ……」


「印刷したとき、こんなモヤなかったよね?」


愛子がグイッと体を寄せてそう聞いて来た。


あたしはなにも返事ができなかった。


写真の隅々までを見ているワケじゃない。


特に空がどんな風に写っていたかなんて、覚えていなかった。


だけど、これは明らかに異質なモヤだった。


「印刷した時に、インクが滲んだんじゃない?」


あたしはできるだけ冷静に判断し、そう言った。


愛子は真剣な表情であたしを見ている。


「本当に、そう思う?」


「なにそれ、どういう意味?」


あたしは愛子に聞き返した。


愛子の言い方だと、まるでこのモヤになにか特別な意味でもあるように感じられてくる。


「だって、おかしいじゃん。和夫の顔だってさ――」


「やめてよ!」


あたしは愛子の言葉を遮って叫んだ。


近くにいたお客さんが何事かと視線を向けて来る。


「愛子の考えすぎだよ」


あたしはそう言うと席を立ち、愛子を置いてファミレスを出たのだった。