それからあたしたちは平和な時間を過ごしていた。


みんなで撮った集合写真は元通り、笑顔の写真に戻っていた。


右上のモヤは子供の頃の彰の顔がクッキリと浮かび上がっていて、あたしたちを見守っているように見えた。


「モヤの正体が彰だったから、モヤを見ていても嫌な感じがしなかったんだね」


教室の中、あたしは渉へ向けてそう言った。


「あぁ。きっとそうなんだろうな。これがただの悪霊なら、きっと写真を持っているもの嫌になってたと思うぞ」


渉はそう言い、机の上に出していた写真を鞄にしまった。


愛子と美津がいなくなったA組の教室はとても寂しかった。


今でも時々2人が笑顔で教室へ入って来るんじゃないかと待っている自分がいる。


だけど、もう二度と2人に会う事はできないのだ。


「梢、大丈夫か?」


黙り込んでしまったあたしを心配して渉がそう声をかけて来る。


あたしは小さく頷いた。


日常はすべて元通りになったのだ。


すぐに前を向く事はできなくても、進んでいくしかないんだ。