渉があたしの体を抱きかかえて起こしながら美津へと怒鳴る。


しかし、そこに美津の姿は見えなかった。


ガードレールの下を覗き込んでいる翔太の姿しかない。


あたしは考えるより先に動いていた。


翔太の隣に立ち、用水路を見おろす。


雨も降っていないのにゴウゴウと音を立てて流れて行く水があった。


その水はひどく濁っていて、中まで確認することができない。


「美津……美津！？」


必死になって美津の名前を呼び、周囲を探す。


「くそ！　美津の家に連絡してくる」


渉がそう言い、スマホを片手に用水路から離れた。


「嘘でしょ……？」


たったつい数分前までここにいたのに。


その美津が、今はもういない。


それが信じられなくて、あたしは何度も目をこすって用水路へと視線を向けた。