数十分歩いて見えて来たのは用水路だった。


あたしは流れの速い用水路を前にして思わず足がすくんでしまった。


彰の話を聞いたばかりだったからだ。


「美津、どうしてここへ……?」


「だって、ここに彰がいるんでしょう?」


美津がゆるりと振り向いてそう聞いて来た。


あたしは驚いて目を見開く。


「美津、どうしてそれを?」


美津に用水路から彰の遺体が発見された事を話しただろうか?


記憶と辿ろうとする前に、美津が再び歩き出していた。


「ここに行けば彰に会えるんだよ」


「美津、待って! なにする気!?」


「会いに行くんだよ。彰に」


美津は用水路に沿うように設置されているガードレールに足をかける。


その行為に戸惑いは見られなかった。