この街には闇丘がある。
それはつい最近まで木に覆われていて、とても陰湿な場所だった。
その丘には元々立ち入り禁止の看板があった。
それは今ではとても劣化してしまっているけれど、闇丘に足を踏み入れる地元の人はいなかった。
足を踏み入れてしまうのは、この街の歴史を聞かされていない子供たちと、他の県から来た人くらいなものだった。
「どうして闇丘っていう名前がついかた、わかる?」
「暗い場所だったからでしょう?」
「違うのよ。あの丘に街にある闇をすべて置いて来たからなのよ」
「街の闇……?」
「そう。昔でいえば不作だとか、食べ物がないといった悪い事。最近で言えば犯罪のような悪い事」
「そう言う、街で起こる悪い出来事を丘に置いておくってこと?」
「そうよ。あの丘が悪い部分を全部吸収してくれる。昔の人たちはそう信じていた。そしてそれは、12年前までずっと信じられていた」
12年前。
彰が亡くなった年のことだ。
あたしは緊張で口の中がカラカラに乾燥するのを感じていた。
それはつい最近まで木に覆われていて、とても陰湿な場所だった。
その丘には元々立ち入り禁止の看板があった。
それは今ではとても劣化してしまっているけれど、闇丘に足を踏み入れる地元の人はいなかった。
足を踏み入れてしまうのは、この街の歴史を聞かされていない子供たちと、他の県から来た人くらいなものだった。
「どうして闇丘っていう名前がついかた、わかる?」
「暗い場所だったからでしょう?」
「違うのよ。あの丘に街にある闇をすべて置いて来たからなのよ」
「街の闇……?」
「そう。昔でいえば不作だとか、食べ物がないといった悪い事。最近で言えば犯罪のような悪い事」
「そう言う、街で起こる悪い出来事を丘に置いておくってこと?」
「そうよ。あの丘が悪い部分を全部吸収してくれる。昔の人たちはそう信じていた。そしてそれは、12年前までずっと信じられていた」
12年前。
彰が亡くなった年のことだ。
あたしは緊張で口の中がカラカラに乾燥するのを感じていた。



