沢山の人がいたから、お母さんたちは会話に夢中になってしまった。


あたしたちから目を離してしまったのだ。


気が付いた時には彰はいなくなっていた。


「待って、お母さん」


あたしは話しを聞きながら疑問ばかりが浮かんできていた。


公園には沢山の人がいた。


母親も、小学生の子もいた。


それなのに、誰もわからない内に彰だけいなくなったりできるだろうか?


どう考えてみてもおかしかった。


それに、お母さんはさっき『きっとあんたは大丈夫だから』と言ったのだ。


あたしたちに関係のない所で彰が行方不明になっていたとすればい、そんな言い方はしないはずだった。


「梢……」


お母さんは困ったように空中へ視線を漂わせた。


「何を隠してるの? 本当のことを教えてよ!!」


そうじゃないと、あたしたちはいつまでたってもなにもわからないままだ。


お母さんは大きく息を吸い込むと、「このことは絶対に誰にも話してはいけないの」と、あたしの目を見て言った。