夜の冷気が体を包み込んでも、今はとても熱かった。


受付で病室を聞きエレベーターに乗る。


少ししか走っていないのに、心臓は狂ってしまったかのようにドクドクと早く動いている。


ついさっき食べた夕飯を全部吐いてしまいそうな気分の悪さ。


「病院の雰囲気って嫌い」


愛子がポツリと呟いた。


あたしも同感だった。


特に今はすごく嫌な雰囲気だった。


それは自分自身の気持ちの問題に違いなかった。


目的場所で下りて和夫の病室へ向かう。


院内はとても静かで自分たちの足音しか聞こえて来なかった。


それが余計に緊張を助長しているように感じられる。


「和夫」


渉が軽くノックをしてすぐにドアを開けた。


瞬間、部屋の眩しさに顔をしかめる。


白い壁に白い天井に白い床。


そして白いベッド。


なにもかもが真っ白で、その布団で横になっている和夫の顔も白かった。


肌の色じゃない。


顔にかけられた白い布のせいだった。


見た瞬間、あたしは呼吸が止まっていた。


まだテレビドラマとかでしか見たことのない光景が、そこにあったのだ。