だけど、お母さんが驚いたのは別の事が原因だったのだ。


「梢、覚えてないの?」


「え……?」


あたしは顔を上げ、首を傾げた。


「あれほど昔のことだもんね、忘れてても当たり前よね」


お母さんはどこか寂しげにそう言い、両手に荷物を持ち直してキッチンへと移動したのだった。