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2時間ほど経った時、玄関のドアが開く音が聞こえて来てあたしは自分の部屋を出た。


「ただいま梢」


そう言い、両手に一杯の荷物を持っているお母さん。


まるでさっきの写真のことは忘れてしまったかのようにふるまっている。


「お母さん、あの写真のモヤについて、なにか知ってるんでしょう?」


その質問に、お母さんは微かに体を震わせた。


「なに言ってるの? あの写真はもう神社へ持って行ったから、忘れてしまいなさい」


「忘れるなんて無理だよ! ねぇ、あのモヤの男の人は一体誰なの!?」


気が付けばあたしはお母さんの両肩を強く掴んでそう聞いていた。


お母さんは痛みに顔をしかめ、驚いた顔であたしを見る。


その顔を見てようやく自分の手に力が入っていることに気が付いた。


「ご、ごめん……」


すぐに手を離し、俯いた。


こんなのは八つ当たりと同じだ。