「王様」
「申してみよ」

ソウォンは生唾を飲み込み、覚悟を決めた。

「王様、恐れ入ります。その玉座を暫しお借りしても宜しいでしょうか?」

ソウォンの突拍子もない言葉にその場の空気が凍りつく。
王命を賜っているとはいえ、さすがに玉座を拝借するなど、もってのほか。
その場にいる誰もが呆れ返ったかの表情でソウォンを一瞥する。

「無礼者!玉座を借りるなどと一体何を考えているのだ!謀反の罪に問わねばならん!」
「そうだそうだ」
「玉座を狙うなど、この場で斬首の刑に処すべきです」

重臣らが怒号を浴びせる中、ヘスもさすがに庇いきれぬと心配になり、慌てふためく。

「王様、公主様の残された暗号はまだ続きがあります。どうか、最後まで解読させて下さい」

ソウォンは王に懇願し、頭を床につけた。
そんなソウォンを目にしたヘスは、王の方へと向き直り、頭を下げる。

「王様、私からもお願い致します。この者は、決して謀反などを企てるような者ではありませぬ」
「世子様。ご自身が目をかける娘だからと、さすがにこれは見過ごせませぬな」

ソウォンとの関係を知ってて、領議政はあえてそれを持ち出して来た。
そんな言葉に動揺し、ソウォンの手が震える。

「根拠があるのだな?」
「はい、王様」
「何も明かせぬ時は、そなたの命をもって償って貰うぞ?」
「覚悟は出来ております」
「よかろう。そなたに任せる」

ソウォンの返答にさすがのヘスも不安の色を滲ませる。
信じている。
大丈夫だと心で念じるも、やはり心配で堪らない。
見守るだけしか出来ない自分が不甲斐なくて、ヘスは焦りが見え始めた。

王は腰を上げる。
ソウォンは心配そうに見つめるヘスに頷いて見せる。
私は大丈夫だと。

ゆっくり立ち上がったソウォンは、震え気味の足で玉座へと向かった。