「では、刺客に襲われた件も踏まえて、父上に報告しに行かねば…」
「私がここにいては怪しまれてしまうので、居所に戻ります」
「そうだな、その方が良さそうだ」
「ソウォン様、あと一日しかありません」
「分かってるわ。何としても解明しなければ…」
「必要なものはシビに届けさせます」
手当てが終わったダヨンは、丕顕閣の裏戸から隣の資善堂へと向かった。
室内に残った二人。
無意識に視線が絡み合う。
ダヨンの血が付いたソウォンの夜着を見て、ヘスはソウォンが怪我をしてないか今一度確認する。
「私は大丈夫ですから」
どんな掠り傷であっても許せないヘスは、ソウォンの言葉で漸く安堵した。
「心配かけるな」
「申し訳ありません」
ヘスの長い腕がソウォンの体をきつく抱き締める。
久しぶりの抱擁にソウォンの顔が赤く染まった。
衣から香る白檀の匂い。
すっかり記憶された幸せの余韻は、すぐさまヘスの視線によって遮られた。
「ん?」
「あっ…」
抱き締めることで胸に当たって気づいた違和感。
硬い何かがあると思ったヘスは、抱き締める腕を解き、ソウォンの胸元に視線を落とした。
ソウォンは胸元に隠した竹の書簡と暗号を解読した紙と、香遠亭から持ち帰った地図らしき紙を取り出す。
「これが、先ほど言ってた暗号に関するものです」
それを手に取ったヘス。
以前、戸判の屋敷で見た竹の書簡があることに驚く。
「これは……」
「はい、あの時のです」
「これが亡くなった叔母の残した暗号だったとはな」
ヘスが地図らしき紙を手にした、その時。
部屋の外から鈴の音がした。
「ヒョクが戻ったようだ。ここで待ってろ」
「はい」
ヘスはソウォンの手をぎゅっと握り、安心させる。
そんなヘスに『いってらっしゃい』と言わんばかりに頷いたソウォン。
白檀の残り香を置き土産にヘスは隠し戸の向こうに消えた。



