ロープはホームセンターに売っている。でも、女子がロープを買うのって、ちょっと勇気がいるし、周りの目が気になる。



「え? 何に使うの?」とか思われそう。自殺志願者と間違えられそう。10代の女子がロープを買うだけで、自殺志願者と思われそうなこの世の中、どうかしてるぜ!



レジに持って行った。赤いロープを買った。「袋は入りますか?」って訊かれた。「お願いします。」って答えた。お金を払った。お釣りが返ってきた。それで終わり。店を出てしまえば、もう誰に何を思われていてもいい。どうせその誰かとはこの先、関わり合うことなんかないだろうし。



でも、このロープは違うもんね。このロープは、ムルソーさんを捕まえるためのものだもん。いわば、このロープは私にとって赤い糸。赤い糸って響き、なんかいい。ドキドキする。このドキドキは、サッカー部の先輩に恋した高校時代以来、二度目のドキドキ。ドキドキにもいろんな種類があるけど、その中でも今感じてるドキドキが私は一番好き。このドキドキが一生続けばいいのに。このドキドキで、心臓が耐えられなくなって、死んでしまえばいいのに。