ナポリタンが来て、左手にスプーン、右手にフォークを持って、スプーンの上でパスタを巻いて、食べる。この食べ方を知ったのは、高校生の頃、友達と1皿1000円くらいするパスタ屋さんに行った時で、私は驚愕した。
パスタはフォーク1本で食べるものだと思っていた。お母さんにはそうやって教わったし、お母さんもミートソースパスタをフォーク1本で食べていた。
友達の家にお泊りした時に、出されるご飯の味付けだったり、メニューで「自分の家とは違うな。」って思うことはあったけど、まさか食べ方でも同じような感覚に陥るとは思わなかったし、やっぱりスプーンとフォークを使って食べる方が上品に見えて、フォーク1本で食べてた自分が下品に思えて、あの恥ずかしさを忘れないために、それ以来、パスタを食べる時は、スプーンを使うようにしている。
おしゃれは、暑かったり、寒かったりするもんだってよく言うけど、上品も同じような気がする。スプーンを使ってパスタを食べ始めてから、なんだか以前よりもパスタの味が美味しくなくなったような気がする。啜りたい。私は、ラーメンを食べる時のように、パスタも啜って食べたいの。口の周りにトマトソースを付こうが、お構いなしにガツガツ食べたいの。それが、できないのは、私が一人で、周りの目がまるで監視カメラのように見えるから。
本物の監視カメラ……いや、それよりも質の悪いはずの盗撮カメラの方が、周りの目よりも気にならないのには、我ながら驚いている。
チェスターコートの女の人は、ドリアを注文した。メガネの男の人も同じものを注文した。バカだなって思う。好きな人(実際はどうかはわからないけど)と同じものを注文するより、違うものを注文して、シェアし合う方が、2つの味を楽しめて合理的だし、より愛情が深まっていくような気がする。



