100均を出たのがちょうどお昼時の時間で、私は近くのファミレスに入った。



ファミレスに一人で入るのって、ちょっとどうなんだろうって思う。ファミリーレストラン。つまり、家族で行くレストランに、一人で行く人は、家族がいない人ってことなんじゃないかって、そんなわけないのに、名前に引っ張られて、嫌でもそんな気持ちになる。



その証拠に、周りは家族連れや、恋人たち、サラリーマンの団体で賑わっていて、ぐるっと見回したところ、一人で来ているのは、私の他に、大学生くらいのメガネをかけた男の人だけで、その人は、ドリンクバーで注いできたコーラを飲みながら、分厚い本を読んでいる。



仲間だ。そう思った。もしここで、話しかけたら、恋愛ドラマみたいな展開にならないかなってちょっとした妄想。でも、私、自分の容姿に自信がない人間なので、話しかけられない。いや、そもそも自分の容姿にコンプレックスを持っていない人なんて、この世にいるんだろうか。



バイトの先輩、チャラい佐藤さんとかなら、そう思ってそう。せっかくの休みなのに、私の心の中に入り込んでくる佐藤さんのポテンシャルがすごい。皮肉だなあ。



私はナポリタンとパンを注文した。ナポリタンってパスタの中で一番好き。実家では、パスタと言えば、ミートソースで、幼稚園の頃から、休みの日の昼食は、大抵、インスタントラーメンか、ピラフ、パスタなら必ずミートソースだった。



でも、ミートソースパスタって、食べにくいんだよね。ミートソースとパスタがちょうどよく無くなるように調整しながら食べなきゃいけないから。私はいつも、ミートソースが残っちゃって、お母さんに「全部食べなさい!」って怒られてたっけ。その点、ナポリタンはそんなこと気にしないで食べられるから好き。



先にパンが運ばれてきて、そのタイミングで、唯一の仲間だと思っていたメガネの男の人のテーブルに、ピンクのチェスターコートを着た、茶髪でゆるふわカールの女の人がやってきた。多分、男の人の彼女なんだろうなと思う。綺麗な人だった。



裏切られた。私はメガネの男の人を引っ叩いてやりたくなった。よくも私を裏切ったわね! よくも私の純情を弄んでくれたわね! ってな風に。でも、そんなことを私に思われているなんて、あのメガネの男の人は、露ほども感じていないんだろうな。あのメガネの奥の黒々とした瞳は、ピンクのチェスターコートの女の人しか映っていないんだ。