それから、電子レンジでチンして、それからカメラの前で黙々と、のり弁を食べた。



「食べ終わりました。」



今週一番どうでもいい報告だ。



「お風呂は、いつも朝入ります。って言っても、シャワーで済ませちゃうんですけどね。明日はバイトが休みなので、夜更かしできるんですけど、特にすることもないですし、何だか疲れたので、寝ることにします。あ、バイトのシフトのことですけど、基本的に、月、火、木、土曜日の週4日です。時間は、17:00から21:00です……置き手紙に質問があったので、一応報告します。おやすみなさい!」



それから、逃げるようにベッドに入って、電気を消した。しかし、ベッドに入っても、一向に眠れなかった。



盗撮魔にビデオレターまがいのことをするなんて、どうかしてる。でも、ムルソーさんも盗撮がバレてるのに、盗撮を続けるなんて、どうかしてる。



私たちはどうかしてる。でも、どうかしてるって一体、どのものさしを基準に測った長さなんだろう。



私たちが普通で、世間がどうかしてるってことはないだろうか? もし、この世界が私を、私たちを中心に回ってたら、私たちが正しくて、世間が間違ってることになる。



私は時々、自分が世界の創設者で、常に別室で誰かに監視されていて、街を歩く人がすべてエキストラで、私がこの世界の創設者と知っていながら、知らんぷりして、神様か誰かに与えられたシナリオ通りに過ごしているだけじゃないかって思うことがある。



そんなこと、あるわけない。でも、ムルソーさんが言っていた、「悪魔の証明」を用いると、「あることの証明よりもないことの証明の方が難しい」のだから、確率で言えば、あるわけがない方が低いんだ。



布団をかぶった。こうやって寝ると、朝、寝癖がすごいことになる。それを知っててやる。朝、起きた時にムルソーさんに「布団かぶって寝たら、こんなになっちゃいました。」って言うためだ。



私ってあざとい女。



そうだ。明日、100均に行って、ノートを買って来よう。チラシなんてそう毎日来るものじゃない。ムルソーさんが返事を書いてくれるように、ノートを用意しておこう。



もちろん、鍵は開けてから出る。忘れないように、忘れないように……。