鎖骨を噛む






強い風が吹いて、オレの周りで桜の花びらが舞った。やっぱり夜桜は散り際こそ美しいと思った。



その光景を見ながら、胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。煙が近くにあった蛍光灯に照らされて、綺麗だった。



ふと、タバコを取り出した胸ポケットに、舞い散っていた花びらが一つ、ひらりと入って、どこか心が癒された。



でも、本当に美しいのは、綺麗なのは、癒されるのは……もうやめよう。死んだ奴のことを思い出すのは。



ただ、このタバコを吸い終わる間だけでも、思い出していたい。あの楽しかった日々を一つ一つ桜の花びらに変えて、思い出していたい。愛した女を感じていたい。



鎖骨に、手を当てて。