人は死んだ後が一番美しく見えると思う。



美しさを求めた売れない画家のオレは、そこに真の芸術があると思う。



親鸞はこんな歌を残した。



「明日ありと思う心の仇桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」



今美しく咲いている桜を、明日も見ることができるだろうと安心していると、夜に強い風が吹いて散ってしまうかもしれないという意味が込められている。オレはこの歌が好きだ。人の命も一緒で、明日も生きているだろうと思っていると、突然の天災で死んでしまうかもしれない。だからこそ、悔いのないように今を精一杯生きていく必要がある。



ただ、桜は散り際が一番美しいと思う。それは人の命も同じで、死んでいくその瞬間が一番美しいのだ。



だから、描く。仕事が終わった後に、自分の殺した相手の死に様をスケッチブックに描いていく。りさの死に際は特に美しかった。身体は血に染まり、両手両足を投げ出して、壁にもたれかかったまま目だけはこっちをじっと見つめている。



綺麗だ。ああ、綺麗だよ、りさ。