鎖骨を噛む






「実は、バイト休んだ日に、ちょっと……。」



「おー! マジで!? どんな人?」



どんな人? んー、健司ってどんな人なんだろう……。見た目は、野良猫みたいだけど、どこか安心できる。切れ長の目が鋭くて、ちょっと怖いけど、笑った時の顔が可愛い。黒のシャツが似合ってて、バンドマンみたいにも見える。



「カッコイイですよ。」



「そりゃ、付き合うくらいだから、カッコイイんだろうけど……。あ! 名前は? オレ、交友関係広いから、もしかしたら知り合いかもしれないし!」



……いくら佐藤さんの交友関係が広いからって、せいぜい100人か200人くらいなものだろう。世界中に男は、35億。あと5000万人もいる。それに、健司自体、そんなに友達が多そうには見えない。スマホをいじって、誰かに連絡を取っている姿も見たことがない。そんな健司のことを佐藤さんが知ってるわけがない。



でも、知っているわけがないのだから、別に名前を出してもかまわないか。



「知ってますかねー、高橋健司さんって言うんですけど。」



「たかはしけんじ?」佐藤さんが急に眉をひそめ、顎に手を置いた。



「……まあ、どこにでもいる名前か。」