私は健司が噛んだ鎖骨の辺りを指でなぞった。凹凸が確認できるくらい、くっきりと歯形が付いているようだった。まだ少し痛いけど、これは私が独りじゃないって烙印だ。たった今、私は独りじゃないと証明されたのだ。孤独を卒業したのだ。



「どう? こういうの。」



「……悪くない。」



私は健司の胸元に顔を埋めて、鎖骨を思いっきり噛んだ。ホクロのある方の鎖骨で、顔を離すと、歯形の中にホクロがあって、目のような模様ができた。



「これで健司も独りじゃない。私たちは独りじゃないんだよ。」



「そうだな。」健司も同じく指で鎖骨に付いた歯形をなぞった。



「それにしても、鎖骨を噛まれるのって結構痛いのな。大丈夫?」



「大丈夫。」私は電気を消して、健司の首に手を回した。



「痛いのは独りじゃないもん。」