鎖骨を噛む






「健司さー、家の近くに坂があって、同い年くらいの女の子と一緒に登ってた記憶があるって言ったじゃん? 実は私も同じような記憶があるんだよね……。同い年くらいの男の子と一緒に坂を登ってた記憶。」



「でも、あの辺りは坂が多かったでしょ? それに、オレの記憶では確か3歳か4歳だった。ってことは、りさはまだ生まれてないことになるでしょ?」



「そうなんだけど……私、偶然とは思えないんだよね。」



健司はパズルの手を止めた。



「うーん、例えばさー、オレの母さんとりさのお母さんがご近所で、仲が良かったとするじゃん? で、りさのお母さんのお腹の中には、りさがいて、オレの母さんとその手を握っていたオレと、りさのお母さんとお腹の中のりさと4人であの坂を登ったってことは考えられない?」



「それって、私に生まれる前の記憶があったってこと? そんなことってある?」



「どうだろうな……。」健司は再び手を動かし始めた。



「世の中にはさー、傍から見ると理解できないことってあるじゃん?」