部屋に入ると、来栖が急に、気が抜けたように倒れそうになった。

私は来栖を支えて、そのままベッドへと運んだ。

ちゃんと、布団もかけてあげた。

しばらくして、来栖が口を開いた。

「…もう一回きくけど、なんできたの?」

しんどそうな声を出しながらも、はっきりした口調だった。

「私は来栖を見舞いにきたの。あと…言いたいことがあって…」

「なんで、お見舞いなんてきたの?…俺のこと、嫌いでしょ?…言いたいことだって、学校で言えんじゃん…。まあ、俺は乃々香のところにはもう行かないつもりだったけど」

そう言われて、瞬間的に私はくちばしっていた。

「ダメ!…そんなの、ダメ。私は…私、は…」

私は自分の気持ちを言おうとしたのに、涙が出てしまった。

手で拭いても拭いても涙がでてくる。

「えっ…ちょっ、今、泣くことあった?俺、冷たくし過ぎた?」

来栖もびっくりして、困惑している。

私は涙が止まらず、うまく喋れないので、ブンブンと首をふって否定した。

「…違うの?…じゃあ、なんで泣いてんの?それと…なんで、俺が乃々香のところに行かないって行った時、ダメって言ったの?」

そう言うと、来栖は体を起こして、私の手をつかんだ。

「ねぇ、どうして?乃々香、答えてよ」

私の目を見て聞いてくる。

聞いてくる来栖の目は少し熱のせいか、色っぽかった。

私は急に自分の涙が恥ずかしくなり、手で隠そうとしたが、もう一方の手もつかまれてしまった。

来栖は自分の顔をそのまま、私の顔に近づけて、もう少しで鼻がくっつくんじゃないかってくらいの距離で、もう一度囁いて聞いてきた。

「ねえ、なんで俺が乃々香に会わないっていったらダメなの?教えてよ。そんなふうに言われたら、俺、期待しちゃうじゃん」

そう寂しそうな、愛しい人に聞くように言われて、私は自分の気持ちを言おうと口を開こうとした時、来栖は私の唇を奪った。

一瞬びっくりしつつ、私はこたえた。

しばらくして、唇が離れると、来栖は言った。

「俺、本気で、乃々香のことが好き。だから、俺と付き合って。大事にするから」

真剣な声と目を向けられて、私は自然と伝えたかったことを言っていた。

「うん…。私も…私も、来栖が…勝利が好き。最初は最低な奴だって思ってた。でも、…いつの間にか、堕ちている自分がいた」

「俺も」

そう言って、私たちはお互いの顔を見合わせたあと、口を揃えてこう言った。

「「ああ、恋してしまった」」