私は道に迷いつつ、来栖の家に向かった。

そして、一時間かけて、やっと、来栖の家の前まで来ることができた。

「でっかい…」

来栖の家は私の家よりも相当でかかったので、自然と呟いていた。

ゴクリ…。

私は緊張しつつ、インターホンを押した。

ピンホーン、ピンホーン。

この道が広いせいか、インターホンの音がやけに響いた。

しばらくして、インターホンからガチャ、という音がして若い女の人の声が聞こえてきた。

「はい、どちら様でしょうか?」

「あの…、えーと。私は長崎乃々香と言います。く、来栖くんがインフルエンザにかかってるときいて…。お見舞いにきました」

おどおどしながら、そう答えると、ガチャ、と切れる音がした後、玄関のドアがあいた。

でてきたのは、すっごく若い女性だった。

どことなく、来栖に似ているような…。

お母さん、かな?

そう思っていると、こっちにきたかと思うと、急に私を抱きしめた。

「キャー。声も可愛いと思ったけど、顔も超可愛い」

「あ…あの、お母さま?く、苦しい…です…」

そう言うと、私の様子に気づいたのか、少し力をゆるめてくれた。

「ごめんなさいね。急に抱きしめたりして。私ね、可愛いものを見ると、抱きしめたくなるのよ」

「そうなんですか…」

そう答えるしかなかった。

すると、突然玄関のドアがあいた。

「母さん、俺頭痛いから、騒ぐのやめ…て…」

怒鳴り気味ででてきたのは、私が今日目的として会いにきた来栖だった。

私がいるのに、すごくびっくりしている。

「なん…で…、乃々香ちゃんが…」

私は深く深呼吸をした後、来栖の目を見た。

「言いたいことがあって…。でも、来栖がインフルエンザだっていうから。会いに来たの」

そんな真剣な様子をみて、お母さまが口を開いた。

「せっかくきてもらったんだし、部屋で話したら?勝利も今立ってるのがやっとでしょ?」

そう言われて、来栖のほうをみると、少し戸惑ったあと、私のほうにきた。

そして、私の腕をつかんだ。

「きて」

私は引っ張られて、そのまま来栖の部屋についていった。