来栖が私のところにくるようになって、半年がたった。

しかも、毎日、私にちょっかいをかけてくる。

今日も…。

「おっはよう、乃々香ちゃん。今日も可愛いねー」

木ノ葉はもう慣れたのか、来栖がくると、さっと距離を置くようになった。

「オハヨウゴザイマス。デハ、クルス、サヨウナラ」

「そんなこといわずに、俺とお話しようよ」

「絶対に嫌!あんたは結局女と遊ぶことしか考えてないんでしょ。木ノ葉に飽きたから次は私って。私はそんなにバカじゃない。遊びで口説くのもほどほどにしなさいよ。迷惑だから」

私はそう吐き捨てると、木ノ葉に行こう、と言ってその場を去ろうとした。

しかし、その瞬間、腕を捕まれて、来栖の元まで引っ張られ、耳もとでささやかれた。

いつもとは違う、少し焦ったような声で。

「じゃあ、本気、だったらいいの?本気だったら、俺のこと見てくれる?」

そう言われて、耳もとがこしょばくなり、私はバッと来栖と距離をとった。

「な、何いってんの?私はそもそもあんたのことなんて…。はなっからみてない」

あれ?

私、今どうして言葉がつまったんだろう。

自分の言動にどまどっていると、来栖は少し、寂しそうな顔をして、去っていってしまった。

私はそのまま去っていく寂しい背中の来栖をみながら、呆然とすることしかできなかった。