漸く朝も寒くなくなって来たと思ったら、もう桜が散り始めている。


校門から校舎まで続く道に落ちているピンクの花びらは、可憐な女子生徒に踏まれている。


ついこの間までは皆に称賛されていたのに、虚しいものだ。


俺も桜を踏みながら、考え事を巡らせる。


教員としてこの学校に赴任してから2週間が経った。


俺の評判は上々である。


顔は良い、性格も良い、教え方も良ければ、課題の出し方も適切、他の教員との関係も良好だ。


生徒は勿論、他の教員からの信用も得つつある。


そういう点は良いのだが、中枢の部分はまだまだだ。


榎本果穂にはなかなか近付けなかった。


態と学級委員に選出したのはいいものの、個人的に話す時間はなかなか取れない。


彼女はいつも誰かと一緒にいた。


提出物を運ぶ時も、取り巻きっぽい子達と一緒に来る。


あの取り巻きは多分、俺目当てで来ている。


他の用事で榎本果穂だけを呼んだ時も、何かと用事をつけてさっさと帰ろうとする。


完全に避けられているのは目に見えていた。


俺、避けられるような事はした覚えがないんだけど、もしかして俺の目的に気付いている?


まさかな。