そう話す彼女の笑顔は何処か寂しそうで、嘘臭くて、でも本当に楽しいようにも見える。


俺は気が弛んだのだろうか。


今までなら、こんな貼り付けたような笑顔って馬鹿にしていたはずなのに、真偽が確かめられない。


「本気で言ってる?」


「本気ですよ。」


声も薄っぺらく聞こえるのに、本当のように聞こえる。


でも100%本気でないのは分かってる。


でも嘘ではない。


「…まあいい。
行くぞ。」


「はい。」


笑顔が崩れないなんて…そう思いつつ、とりあえず大人しくついてくる彼女に違和感を覚える。


…っつか、どうしてこんなにも言う事を聞くんだ?


目的があるとしたら…本気で逃げるためか?


でもこのお嬢様なら、逃げようと思えば自力で逃げられる。


それこそ金はあるし、人脈もある。


人脈っつても、榎本悟郎が死んだらすぐに切れるような安っぽいものだろうが…それでも今なら利用可能だ。


なのに何故俺に頼る?


口ではこんな逃がすと言っときながら、実際の行き先なんて分からないはずだ。


現に俺は今日になっても迷ったんだ。