父親は携帯電話をいくつも盛っていた。


仕事で使うものは持っていっているはずだから、プライベート用?


分からないけど、その罵声のような着信音に、私は震えていた。


誰かが見に来る可能性と、音への恐怖だった。


その音はとても長い時間鳴っているように思えたが、ついに鳴り止む時が来た。


近寄ると、留守番電話サービスを案内するアナウンスが聞こえてきた。


そしてピーという機械音がと共に、ダミ声のおじさんの声が聞こえてきた。


「榎本さん、明後日ですよ、明後日。
金持ってこなかったら、病院の事故に使った爆弾、お宅の会社と家に設置しますからね?
ついでに貴方が爆弾の手配を頼んできた時の録音テープまだ残ってるんで。」


下品な笑い声の混じった留守番電話は、そこで終わった。


私はその場にしゃがみこんでしまった。


恐怖と焦燥て大きく脈打っていた心臓を両手で押さえ、理解しがたい現実を飲み込もうとする。


前に部屋の前で聞こえた会話、今の電話、私が部屋で見付けたもの…見てはいけない世界に触れてしまったようだ。


そんな事実を処理しきれないうちに、また携帯電話が音を立てる。


今度はメールだ。


私は父親の携帯電話を操作し、中を確認する。


勿論、送り先は私が知らない人で、タイトルも本文もない。


ただ、音声データだけが添付されていた。