「おはようございます!」


「伊藤先生、おはようございます!
…伊藤先生?」


名前を2度呼ばれ、俺は漸く挨拶された事に気付く。


「ああ、おはよう。」


素っ気ない返事をして、俺は職員室へ向かう。


誰かも分からない女子生徒なんて、今はどうでもいい。


その日の俺は、榎本果穂から来たメールの事で頭がいっぱいだった。


相談したい事?そんなわけあるか、榎本果穂は気付いている。


気付かれている事は分かっていたが、こんなに早くにコンタクトを取ってくるとは思わなかった。


言い訳なんてしようがない。


榎本果穂の事だから、盗聴器を撮って、証拠として残している可能性かある。


スマホ1つ壊したところで、他の媒体にも残しているだろうしな。


それにしても…榎本果穂は何がしたいのだろうか?


俺をこの学校から追い出すのが目的だとしたら、他にやりようがある。


態々連絡を寄越したという事は、何らかの取引をするつもりなのだろう。