残念な事に、父親が帰って来るまではあっという間だった。


家中の掃除は週末に済ませてあるし、父親の好きな食べ物の揃えてあるから小言を言われる事はないだろうが、帰って来るというだけで嫌になる。


それは顔にも出ていたようだ。


「果穂ちゃん、あんまり元気ないよ。
大丈夫?」


早めに学校に来て、誰もいない教室で外を眺めていると、花音ちゃんに話しかけられた。


そういえば、花音ちゃんは今日の日直だ。


「おはよう、花音ちゃん。
私なら元気よ。
最近少し寝不足だから、そう見えたのかも。」


「果穂ちゃんが寝不足?
珍しいね、忙しいの?」


驚いた顔で、花音ちゃんは私の前に座る。


くりくりとした大きな目が、私の瞳を覗いていた。


「少し…でも大した事ないのよ。」


大した事あるなんて言えないから、適当に誤魔化す。


まだ心配そうな顔をしている花音ちゃんに、ふとこんな事を聞いてみた。


「花音ちゃん、今日って補講あった?」


「ううん。
補講はないよ。
でも予備校はあるの。」


「そっか、花音ちゃんも忙しいね。
ありがとう。」


花音ちゃんが予定ないなら…そんな夢みたいな考えは捨てた。