その連絡は突然やって来た。


「え?お父様、帰ってこられるのですか?」


「ああ。
帰ると言っても、新しい機器の開発を確認するために帰ってくるのと、採用の関係で帰るだけだ。
1ヶ月もしないうちに帰るよ。」


「そうですか。
…では、ゆっくりとお食事する時間はなさそうですね。」


「そうだな。
アメリカの方も放っておけないから、出来るだけ早く向こうに帰りたいと思っていてな、なかなか休日を楽しむ暇はないよ。
日本にいる間は果穂の今住んでいる家に行くから、悪いがゲストルームを掃除しておいてくれ。」


「分かりました。
…ええ、無理せずに頑張ってください。」


電話が切れる音がすると、私はすぐさまスマホを机の上に置いた。


もうすぐ5月の終わりの出来事だった。


まだ5月だというのに蒸し暑くて、ただでさえ不快な夜だった。


かと言って冷房を付ける程の気温ではまだなく、扇風機はウォークインクローゼットの中で出すのが面倒くさい。


窓を開けても風が入らず、ただ単に空気が微弱に流れるだけだった。


こんな日は早く寝るに限る。


そう思って、お風呂も歯磨きも済ませた矢先、更に不快な電話が掛かってきたのだ。


気分が悪くて、寝るに寝れない。


私はベッドに潜るのを諦めて、卓上の電気スタンドのスイッチを入れる。


そして何か読むものがないか、本棚を探ってはみるものの、どれも読み飽きたものばかりで気分が乗らない。