辿り着いたのは屋上、に行く途中にある社会科資料室。地図や教材が置いてあるその部屋は、ほとんど人が来ないせいでだいぶ埃っぽい。

 おれとひなたちゃんは、そこで予鈴と本鈴を聞いた。五時限目をサボってしまった。人生初のサボりだった。

 連れて来たわりに、今すぐ話したいことがあったわけでもないから、もう何分も黙ったままだ。


「……和泉」

 ついにひなたちゃんが口を開いたけれど、一緒にサボらせてしまった罪悪感で返事ができない。

「和泉、どうしたの、あんたらしくないよ」

 心配そうな声色。

「黙っていれば美人で絵になるあんたが、そんな……泣きそうな顔してるなんて」

「え?」

 弾けたように顔を上げると、声と同様ひなたちゃんは心配そうな顔をしていた。


「……ひなたちゃん、俺、もうチャンスはないのかな」

「チャンスって……?」

「ひなたちゃんと、付き合うチャンス……」

「……」

「おれやっぱり、ひなたちゃんがいいんだ。そりゃあたまに告白してもらったりもするけど……。今年は三年間で一番チームがまとまってる。絶対王者を倒して全国に行けるかもしれない。そんなときだから、誰よりもひなたちゃんに、そばにいてほしい」

「……」

 ひなたちゃんは伏し目がちに視線を反らして、黙り込む。

 ああ、やっぱりだめなのか。
 二度も振られるとなると、もう立ち直れないかもしれない……。